アスベスト:労災死訴訟・地裁賠償命令判決 中部電の安全義務認めず
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- 2012-3-27 4:02
中部電力浜岡原発(御前崎市)でアスベスト(石綿)を吸い死亡したとして、2次下請けの男性会社員の遺族が中電など3社に損害賠償を求めていた訴訟は、静岡地裁(足立哲裁判長)が元請けの中電子会社と下請け会社の責任を認め約5200万円の支払いを命じました。弁護団によると、原子力発電所での作業をめぐる石綿訴訟は全国的にも極めて異例とのことです。
訴えていたのは、腹膜中皮腫で死亡した御前崎市のメンテナンス会社社員、(当時39歳)の妻(44)ら遺族3人。賠償を命じられたのは、中部電の子会社で、保守点検会社A(名古屋市)と、その下請け社B(東京都千代田区)です。
判決は、元請けのA社と下請けのB社が「作業員にアスベストを吸わせないよう、マスクを着用させるなどの安全配慮義務を怠った」としています。しかし中電については「原告の作業を指揮監督しておらず、責任はない」と判断しました。
閉廷後の記者会見には原告らを支えてきた妻の兄(48)が参加。「被災地ではがれきの中でアスベストがむき出しになっている。 今後のアスベスト処理に向け、今回の判例で一つでも二つでも(安全対策が)前進してもらえば、亡くなった弟の死も無駄ではないと思う」と再発防止を訴えました。
熱に強いアスベストは、原発でシール材など多くの部品で使われていたことが分かっており、鶴岡寿治弁護士は「原発作業員は放射線だけでなく、 アスベスト粉じんにも注意しないといけないことを今回の判決が物語っている」と話しました。
大橋昭夫弁護団長は「一番責任を負わなければいけない企業(中電)が免責されたのは非常に残念」と不満をにじませながら、 「アスベスト被害を救済するのが全国的な流れ。県内にもその流れが広まったとみるべきだ」と意義を述べたといいます。
A社の総務グループは「アスベストの粉じんが飛散する可能性はなかった」と請求棄却を求めており「判決の内容を十分に検討して対応したい」 とコメントしています。